沖縄県知事選に過去最多の6人が立候補した。9月13日の投開票まで、沖縄の将来を見据えた政策論争を深める必要がある。
立候補者と選挙戦の構図
立候補したのは届け出順に、新人で前那覇市副市長の古謝玄太氏、新人で会社社長の兼島俊氏、新人で医療法人会長の末吉正弘氏、現職の玉城デニー氏、新人で会社代表の比嘉隆氏、新人で会社経営の屋良朝助氏。古謝氏と玉城氏を軸とした選挙戦となる見通しだ。
下地氏の不出馬と政策協定
出馬を表明していた元衆院議員の下地幹郎氏は告示直前に不出馬を表明し、自民党本部と政策協定を結んだ上で古謝氏を支援するとした。協定は党本部の主導で結ばれた。
合意書には(1)沖縄の子どもの貧困対策予算の300億円確保(2)5年で沖縄本島への鉄軌道着工のめどをつける(3)2030年G7サミットの沖縄誘致(4)普天間飛行場の返還期日を明らかにする―の4点が盛り込まれた。普天間返還については「辺野古移設工事を工程通り進め、2036年に終了」と明記され、下地氏が主張していた「民軍国際空港案」は反映されていない。
地元無視の合意への批判
下地氏は「第三極」を掲げて独自色の強い政策を打ち出していたが、出馬取りやめは自身の演説と矛盾する。政策協定が地元の頭越しに決定されたことに対し、自民党沖縄1区支部長の国場幸之助衆院議員は党本部に西村康稔選対委員長を訪ね、抗議を申し入れた。
自民党は下地氏との合意について県民に説明する必要がある。党が推薦する古謝氏の公約にない政策が実行されるのか、地元の頭越しの合意は地方自治の否定ではないのか、県民は注視している。
政治取引ではなく政策論争を
高市早苗首相は自民党役員会で県知事選を「政権基盤を占う選挙だ」と述べたという。しかし、地元を蚊帳の外に置いた強引な手法は県民不在の政治取引であり、政党の論理で有権者を振り回せば政治不信が深まる。自民党には正面からの政策論争が求められる。
辺野古新基地建設では、設計変更申請不承認などの県の決定を政府が覆し、司法が追認してきた。県側は対話を求めているが、国は「辺野古が唯一」との立場を崩さない。「台湾有事」を名目とした軍備増強や物価高、子どもの貧困対策など、議論すべき課題は山積している。
知事選の主役は県民だ。候補者は政策を訴え、政党は政策論争を通じて県民主体で沖縄の将来を選択できる環境を整えることに徹すべきだ。