県知事選でSNSデマ・誹謗中傷 民主主義の危機招いた 社説
県知事選SNSデマ・誹謗中傷 民主主義の危機招いた

民主主義の根幹である選挙が危機にさらされている。有権者の判断を揺るがす事態を深刻に受け止めなければならない。

投開票日が明日に迫った県知事選に関するデマや誹謗中傷がネット空間にあふれている。候補者の政策に対する論評ではなく、候補者を狙った悪質な人格攻撃が目立つ。選挙結果次第では沖縄が他国に侵略を受けるという流言飛語も拡散した。多くは沖縄県外から発信されたものだ。

「沖縄包囲網」と化すネット空間

ネット上で、沖縄の有権者を追い込むような「沖縄包囲網」が形成されている状況だと言える。県知事選に関する膨大な投稿を見て不安を覚える人もいるはずだ。これでは有権者の意思による自由な投票は保証されない。民主主義の危機を招いてしまった。

真偽不明な投稿で有権者を惑わせるような行為は直ちにやめてもらいたい。有権者も偽情報を排除するため(1)誰が言っているのか発信元を確認する(2)公式情報や一次情報で確かめる(3)刺激的な見出しや感情をあおる表現に注意する―などの取り組みを心がけてほしい。

発信地の9割が県外、東京3割

SNSなどで発信される情報を分析できるITツール「ソーシャルインサイト」を使って本紙がX(旧ツイッター)の投稿を調べたところ、9割の発信地が県外であった。中でも東京は3割を占める。真偽不明、誹謗中傷の投稿の大半は県外からのものだ。

告示日から1週間でユーチューブに公開された県知事選関連動画の再生数は5千万回を超えていた。このうち再生回数上位30本のほとんどが県外からの発信で、本紙が確認したところ、沖縄の自治や基地反対の主張を攻撃するような動画が目立っている。生成AIによる実在しない画像も多く投稿されているのが今回知事選の特徴だ。

ネット言論空間の異様さ

沖縄の県知事選に対し、他県からXやユーチューブに投稿があること自体、否定されるべきものではない。多様な視点を提示する投稿は多角的な政策論争を促す効果も期待できる。しかし、今知事選に関するネット上の言論空間は異様だ。

米軍普天間飛行場返還に伴う新基地建設に抵抗する県の姿勢を「反日」「中国の手先」などと中傷する投稿は従来からネット上に存在し、県知事選を機に急増した。これらの投稿は沖縄戦や戦後体験を無視、あるいは著しく歪曲するものだ。

辺野古の問題は本来、沖縄だけで解決するのではなく日本全体で解決すべきだ。しかし、そのような主張はネット上で少数派にとどまっている。沖縄に関する民主主義の機能不全はリアルな世界にとどまらず、ネット社会にも及んでいる。

選挙のビジネス化を止められない

2024年11月の兵庫県知事選、25年10月の宮城県知事選もネット上の誹謗中傷が問題化した。国も規制に着手し始めたが、再生回数に応じて収益化する仕組みを変えなければ、選挙のビジネス化を止められない。

ネット社会の広がりの中で、公平な選挙をどう維持するか。今回の沖縄県知事選は重い課題を残したと言える。