沖縄政治の天王山となった県知事選は、新人の古謝玄太氏が初当選した。古謝氏の得票数は42万票余りで、現職の玉城デニー氏と14万票の差をつけた。玉城氏を支えた「オール沖縄」勢力は地滑り的大敗を喫し、沖縄戦後史で光を放った政治潮流は終焉を迎えた。
「県民党」掲げた玉城氏の敗北
選挙戦で玉城氏はオール沖縄を前面に掲げず「県民党」を標ぼうしていた。敗戦が決まった直後、玉城氏は報道陣に「『自公対オール沖縄』の縛りはメディアもそろそろ外した方がいい」と発言している。玉城県政の基盤はオール沖縄だけではないと言いたいのかもしれない。
しかし、翁長雄志県政が発足した2014年以降、沖縄の政治潮流をつくったのはオール沖縄であり、玉城氏は中心的な牽引者であり続けた。オール沖縄は、翁長氏が辺野古新基地反対の一点を掲げ「腹八分、腹六分」で保革を結集させた枠組みである。構成する政党、団体は事あるごとに、翁長氏の名前やオール沖縄を連呼した。選挙前に県民党を掲げても、そう捉える県民は少なかっただろう。
SNSだけでは説明できない大敗要因
琉球新報などが実施した出口調査で、2022年の選挙で玉城氏に投票した層の3割程度が今回は古謝氏を支持したことが分かっている。SNSで玉城氏への誹謗中傷が展開され、真偽不明の情報が拡散された影響は大きかった面もある。しかし、SNSだけに大敗の要因を求めることはできない。
玉城氏の政治基盤の弱体化を招いた2024年の県議選の敗北、今年2月の衆院選における沖縄2区の分裂はSNSの問題だけでは説明がつかない。今知事選で県民は基地問題より経済・暮らしを重視したことを見逃してはならない。
県民生活に根ざした政策が支持回復の近道
選挙戦で9千億円を超える過去最高の県予算、観光収入などが玉城県政の実績としてアピールされた。しかし、日常生活への恩恵がないという不満を抱く県民もいた。それが一気に古謝氏支持に流れたと考えるべきだ。
オール沖縄を構成する政党は、県民生活に根ざして政策課題を掘り起こしてきただろうか。基地問題をはじめとする沖縄の不条理を訴えれば支持が集まると思い込んでいなかったか。反省すべき点は多々あろう。翁長氏が築いた政治的財産と、それを引き継いだ玉城氏の知名度に頼るだけでは、県民に新たな展望を示すことはできない。
一つの時代が終わり、沖縄政治のステージは変わりつつある。沖縄の民意を顧みず新基地建設を強行する政府と対峙する政治勢力はさまざまな困難に直面してきた。今回の知事選敗退もその一つである。
今後、野党になるオール沖縄勢力の既存政党が存在感を発揮する局面もあるはずだ。国の動向を見据え、古謝氏の行政運営を点検し、県民益を高める提案を求めたい。県民ニーズに沿った政策を実現させることが支持を取り戻す近道だ。