知事選の大きなテーマの一つに多様性や多文化共生がある。障がい者、性的少数者、外国人などの少数者が尊重される社会を築くことは、誰にとっても暮らしやすい社会につながる道だ。
制度整備の現状と課題
政府は性的少数者への理解を促すLGBT理解増進法の施行から3年近くを経て今年、同法に基づく基本計画を閣議決定した。県は2025年にパートナーシップ・ファミリーシップ制度を導入した。一方で、当事者の権利を守り、行政サービスを拡充させるには、性的少数者に関する施策の根拠となる県条例の制定も検討課題だ。
県は誰もが尊重される社会の実現に向け、差別のない社会づくり条例を制定している。全国的に街頭やインターネット空間で差別的言動(ヘイトスピーチ)があふれる状況が背景にある。条例は性自認の多様性への理解不足による偏見、差別の解消もうたうが、理解の深まりは十分ではない。
増加する外国人労働者
県内に住み、働く外国人は増加傾向にある。法務省の在留外国人統計によると、昨年12月時点で在日米軍関係の外国人を除き、県内に3万3402人の外国人が住んでいる。沖縄労働局によると昨年10月末現在、県内で働く外国人労働者は前年比18・1%増の2万354人だった。
候補者の公約比較
知事選の候補者に対し、市民団体「てぃーだあみ」が多様性に関する公開アンケートを実施した。県差別のない社会づくり条例が定める差別解消に向けた施策への考え方などを尋ねた。
新人の古謝玄太氏は「性的指向や性自認にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らせる沖縄をつくることは県政の責務」とし、学校、職場、地域で教育活動と啓発活動を着実に積み重ねる必要があるとした。公約には「女性や子ども、LGBTQ、在留外国人のひとびとが安心して生活を送れる社会の実現」などを掲げた。
現職の玉城デニー氏は「性的指向や性自認のために差別や偏見を受けることのない社会」「誰もが多様性を認め合い、個人として尊重され、自分らしく生きられる社会」を作りたいとした。公約には、LGBTQなど性の多様性を尊重する共創社会の実現やパートナーシップ・ファミリーシップ制度の推進などを盛り込んだ。
沖縄の歴史と共生社会への展望
沖縄は大交易時代から中国や日本をはじめとする東アジアの国々と交流を重ね、文化的にも影響を受けてきた。戦後27年間の米統治の影響もあり、さらに多文化の社会形成がなされてきた。
一方で100年以上前から、海外へ多くの移民が渡った。県系人は、南米やハワイなど各地でコミュニティーを築き、それぞれの社会で一定の存在感を示している。
沖縄県民には、多様な人々が生き生きと暮らせる共生社会を作り上げる素地があるはずだ。その一歩は身近な他者との違いを知り、認め合うことから始まる。誰もが暮らしやすい社会をつくるにはどうすべきか。候補者はさらに政策を深め、有権者に示してほしい。